マイポニーへ

私信:

今、携帯が手元にないので
連絡等あればパソコンのほうにお願いします

スミソン
 
  16:33 | Trackback:0 | Comment:4 | 
 
 
 
 
 

ミスター・ジェイラー 01

 今日、友人のあるヤリマンが死んだ。あるいは昨日だったのかも知れない。彼女の最期の恋人は生粋の死姦マニアだったので、おそらくは昨日で、彼からメールが来たのは夜通しメイクラブした後だったのだろう。その知らせを受信した時、姉はいかにも麻薬中毒の娼婦らしい笑みでポテトチップスを頬張っていた。
 「ぬおおおこれは死よ!死の形をしている!!」
 そう叫んでいるが、実際は何の変哲もないオーザクの破片だ。数週間前からずっとこの調子で、死だの悪魔だのメトロだのマンハッタンだのの形をあらゆる食べ物に見出してはデタラメに噛んで飲み込んでいる。しかしタイミング的に姉の戯言は胸に迫るものがあった。
 「ヤリマンが死んだよ」
 そう告げるが、当然返事は無い。姉は今やコンデンスミルクをコカインのように鼻孔から吸引し、ゲホゲホと噎せ込んでいる真っ最中だった。
 長い沈黙。煙草に火をつけて、電灯に向かって吐いた。テレビでは広島カープのフェルナンデスが投げている。彼がゲイか否かと考える。ゲイ感で言えば、外人部門では元阪神のスペンサーと同程度ぐらいなのだろうか。専門外なので判断がつきかねる。
 「ヤリマンって、あの視聴者参加型の?」
 かなりの時間差を経て姉が聞き返してきた。さっきまで喚き散らしては咳き込んでいたあの声とは対照的な、か細くも鋭い声だった。鼻からコンデンスミルクを垂らしている姉の澄んだ目が、絵画を見るように見開き、僕を見据えていた。それに強く惹き込まれて僕は狼狽した。もちろん言っている内容は全く判らないけれども。
 「うん、そう、マジカル頭脳パワーみたいな」
 と相槌を打ってみたが、
 「マジカル頭脳パワーは視聴者参加型じゃないでしょ!!バカねあんたは!!」
 意外にも真っ当な反撃を受けてしまった。同時に、姉は泣き出してしまった。ソフトクリームを落としたピカチュウのような、ひどく悲しい泣き方だった。つられて僕も泣いた。ゴールデンタイムに泣くのは気分が良かった。しかし、これは姉が僕を侵蝕し始めている事実を露呈させているに他ならないということが脳裏をかすめると、途端に僕はトイレットに駆け込まなければならなくなった。

 トイレットは酷く汚れている。扉を開けば悪臭の蒸し風呂状態。壁中には塗りつけられた便、尿とも付かぬ鼈甲色の水飴が床に斑を描き、カミキリムシやタマムシの死骸が一角に放置され山積みになっている。普段の僕ならばそこに姉との暮らしの集約をみるのだが、嘔吐の際に便器の蓋をひらけば、中には大抵の場合ワンダーランドが開設されているものだ。喉元に指を突っ込み、吐き続ける。締めに、ドロンとした黄色い胃液の塊までを躰から抉り出すと、気分は大分楽になった。蹲った姿勢のままで一息吐きながら、ふと、覗き込む。汲み取り式の底なしである。先程の吐瀉物はちゃんとブラザー達と仲良く出来ているだろうか出所が違うだけに心配だ、今日の夕飯何だったっけ素朴なものだったらよかったのだが、とはいえ今の段階に於いての有色同士の争いは無益であり彼らは手を取り合って清潔と戦っていくべきではないだろうか。等と考えているうちに、ある一つの欲望が僕を支配し、どうにも押さえられなくなっていた。
 「こんにちはー、こんにちはー」
 気づいた時には深淵に向かって呼びかけていた。
 「誰か居ませんかー、僕ですよー、お母さんですよー」
 僕の声だけが虚しく木霊し、消えていった。返事はなかった。何度か同じ呼びかけを試みるも、やはり何も無い。徐々に空っぽの胃袋の中で憤りが膨張し始めるのを感じた。
 「このっ……流され損ないめ!クソのくせしやがって、俺の母性愛にガンジーの如く楯突こうってんだな!この恩知らずが!」
 クソに対して思いつく限りの罵詈雑言を浴びせかけていると、ふとトイレットのドアをノックする音。ドアを開けて外に出ると、マヨネーズを口元にぶちまけた姉が、狂人を見るような目でこちらの顔を覗き込んだ。
 「うんちに向かって何喚いてんの、あんた?」
 先程まで気狂いそのものだった姉からの気狂い扱いに納得が行かなかったが、反面、同時に姉の「うんち」のイントネーションの瑞々しさを賛美しもした。
 「それがね、うんちじゃなくて、ゲロだったんだよ。」
 「知らないわよ、そんなの」
 姉はそう答えると、げっぷをした。そして、途端に表情が明るくなり、以下のように至って簡潔に心境を述べた。
 「カラオケ行きたいにゃん」


[マイポニー竹中 / ペニースミソン島津]
Community : 小説・文学   連載小説
 
  15:54 | Trackback:0 | Comment:0 | 
 
 
 
 
 

短篇1 太陽が見えるか

 情婦と常識人が頂上で再会し空には某有限会社の飛空挺が甲高い声で咽び泣いていたある晩、腕時計を見ると8時42分53秒だったが、それによって僕はシマダがひどくしぶとい男だという事を悟り、ガトリング砲を搭載した36式の真空管アンプを黄金のツバメが飛翔する原宿の中空に突き立て、こう叫んだ。
「ライフセイバーをダビングしろ!!!!!!!」
半ば強制的にカフェテラスにはベーグルの雨が降り注ぐ始末となり恋人達は蝶にでもなったかのように歓喜した。直説話法のダブワイスを添削するフリーライター達が全国の公衆便所を席巻し、テロリストの様な象の目をした怪物に追われている社会背景を、僕もシマダもひどく疎んじていた。
 新作カセットデッキの実演販売が始まろうとしていて一刻の猶予も無い。各駅切符がゴミ箱に捨てられて窓枠から最終便の雷雨が滴り落ちている。水銀が果てしなく透明な宇宙を力強く上がってプラカードに染み込んだ。人を殴りつけるように素早く、B級映画に出てきた星座のフィギュアがストローでモスコミュールを嗜んでいる。太陽が見えるか。
 甘えきった膨張を見せる過去のフォークソングに憤死してブレイカーの切れてしまった高層ビル群がツバを吐く。奴隷の汚名を着せられてプラスチックのミュールで踏んづけられたハウスミュージックの重鎮はとうに灰と化した排水溝の記念碑として崇め奉られていたので、仕方無く400デシベルの騒音公害と共に色彩の暴力を必要としていた。
渇く街 「欲しいのはまとまった知識なんだよ!!!!!」
 ある労働者がブタ箱で起こす貧乏ゆすりの波が鉄塔から鉄塔へ渡り歩いた。もう時間が無いし方法も無いと思った。それでもシマダは走った。そこに真空管アンプでサイン波由来のSynthbassで乳酸菌を注入するなど、麦茶に氷と共にレモンの輪切りを浮かべるようなものだった。今靴底によって石畳が接吻されて湧き立ち、千本のカザグルマが奇行を涙目で見守るあのパン屋の曲がり角では原理的なポルノ雑誌が風に巻かれた。肌色商法の花嵐に燻し銀のステッカーを貼って、去勢した一部の昆虫学者たちが女性の権利の拡張について2、3の意見を述べ申したてているのを尻目に歌うバブルガムポップは格別じゃねえ?とシマダに聞くと、そうだ、とだけ答えた。 太陽が見えるか。
 その黒点の全てが情熱を相対化する中で地球上に安穏とした廃墟は残すところあと一箇所となった。塩辛い粥とシリアルを同時に頬張って僕らはそれを破壊しに行く。足の踏み場も無いベーグル地獄に横たわるラヴァースロックは鳴り止まない。
 秒針は回想される。今日は取り外し可能なアミノ酸でサプリメントを施された九官鳥を粉砕したダイナマイトか、あるいは腸内環境の精鋭部隊が振りかざす星条旗のレプリカのうちに終わって行った。中央広場でとびきりハードコアな仕打ちを受けた青春時代を決して忘れてはいないし、これからも忘れないだろう。蛇口をひねると聖句の嵐が吹きすさび、地下道がバグパイプのように何かを増幅させた。

 何も無い、という事だけは判った。それは部屋に入った瞬間にありとあらゆるバビロンとの比較の中で、常軌を逸する情報量が壁紙の凹凸(壁紙に凹凸があるのだ)との間で交わされ、半ば挑戦的な視線で蛍光灯を見上げても、それは蛍光灯ではなく、光源らしきものは原理的な灰色の中にしか存在しなかった。
 真鍮のフローズン・ヨーグルト。それが彼女の第一印象だった。くどくどと自分の政治的立場から音楽の趣味までもを絡めた自己紹介を行い、女神と名乗る彼女が舐めた後のアイスクリームは、見事なダビデ像のペニスを模っていた。その技のあまりの滑らかさに舌を巻いた僕は、忽ちのうちに女神を信仰しきってしまった。僕は女神に訪ねる。間説話法で、無くした季節が見つかるルートはあるかと。しかし彼女は直説話法で答えた。
 「無理です。このコーンスターチ野郎」
 ピックが磨り減っている。毛玉取り機の中に僕はいつくかの肉塊を見つけ、強烈なセックス・アピールの一種としてある鳥類がやるのにも似た無謀な変拍子ステップを踏んでいたそれらを掴み取り、街頭の圧力鍋の中にぶち込んだ。あついよう、あついようとそれらは戦慄いたが知った事ではない。ゴキブリ並みの生命力で女神の卵が熱湯から跳ね出し、襲い掛かるような事は起こらなかった。たちまちそれらはスペアリブの骨から染み出したスープの中でその命を絶った。
 世界的にも前例が無かった出来事という訳ではないけれど、無数の選択肢の中でコーンスターチを痔の応急措置に用いたのはこの帝国独自の手法だとしか言い様が無い。GOOD JOB.と、アメリカ人なら言うだろう。きっと。きっとね。
 かくして新時代の夜明けは四半世紀先に繰り越され、それは家族で分け合えるオプション付きとなった。
 
  01:12 | Trackback:0 | Comment:0 | 
 
 
 
 
 

We're BACK.

帰国しました。そして、まさかの復活。乞うご期待。
 
  00:49 | Trackback:0 | Comment:0 | 
 
 
 
 
 

鼻翼のキュビズム (最終話)

chapter 6

 カンボジアの夜に月が登った。修行場準E層に降りて行く僧の手には、片手で抱えられるほどの大きさの紙袋が握られていた。準E層は末端の末端で、犯罪に手を染めた人々が動力系統の仕事に従事していた。修行場とは名ばかりの奴隷収容所、と言っても過言ではなかった。
 図書館での不祥事の責任を幹部に追求されたくまさんも此処で、毎日不必要なボイラーのメンテナンスを行っていた。僧の姿を認めると、くまさんは軽蔑にも似た目つきで彼を見つめた。僧は紙袋から白く乾いた何かの塊を取り出して、くまさんにこう言った。
 「今日から貴方の部下になる男です。背骨の一部しか残っていませんが、ちゃんと教え込めば最低限の作業は覚える筈です」
 「ふぇい、わかりましたのだ、ご主人たま!くまは、カンボジアの識字率の維持に寄与していきたいと思ってるずら!」
 準E層の住人になって変わり果ててしまったくまさんは、その男の背骨を受け取ると、ボイラー清掃の手順をそれに向かって1から説明していった。背骨は無言でそれを聞いていた。僧は暫くその様子を見届けると、自らのサティアンに帰るべく、昇降機を目指した。ちょうど2ヶ月前から整備士として寺院にやって来たボア蔵が作業中だった。軽く会釈をして昇降機に乗り込んだその時。
 「あれ、三蔵さま、何か落ちましたよ」
 振り返るとボア蔵の手には、「プロフォンド発足!薬物中毒女性厳選20人斬り!」のDVDが握られていた。白骨と一緒に紙袋に入れておいた品だった。
 「プロフォンドとは懐かしいですな。私も若い頃は何かと世話になったものです」
 ボア蔵はそのパッケージをまじまじと眺め、感慨にふけっている風だった。
 「坂倉拓海。若々しき頃の凛々しい所業には定評があった。いったい今どうしている事やら……。三蔵様ともあろうお方なら、もしや何か?」
 「エース・ボア蔵、無駄口が過ぎますよ。作業にもどれーーーい、この痴ロリンコ!!」
 「へ、へい、失敬!」
 ボア蔵は僧にDVDを渡すと昇降機のフェンスを閉じ僧を見送り、いそいそと奴隷達の調教状態整備作業に戻った。くまさんは、僧から預けられた背骨に、簡単なところから一連の作業工程の説明をし始めた。
 「いいずらか?ぼくちんの言うこと、しっかりと聞いとかなきゃいけないんでしょ?」
 そう言い聞かせると、大きな麻袋の中から大切そうに何か萎びた棒のようなものを取り出して、それに付属すると思われる二つの玉を爪を立ててもぎ取り、すり鉢に入れると、よだれを噴き出しながら綿棒で鬼のように殴りつけ始めた。
 「うじゃい!うじゃい!う〜〜ん、分かるね!?分かるね!?分かってるねーーーーー!!!!??ぎゃおっす、ぎゃおっす、ぎゃお〜〜〜〜っす…………」
 しかし、この背骨、くまさんの説明を熱心に聞いているとはとうてい思えない。すり鉢の右側に横たわり、ただじっとしている。
 「ね〜〜〜聞いてちょうだいよ〜〜〜あたいのおはなし、聞いてくださいよ〜〜〜」
 くまさんにしてみれば、後輩ごときにまでこの扱いとは怒り心頭も甚だしいのである。青い鼻水を垂れ流して泣き出してしまった。それでも背骨はビクともしない。くまさんは一瞬黙り込むと、恨めしげに背骨を見つめた。
 「俺、もうキレたから。ほんきだすから。」
 口走ると、そのすり鉢の中に背骨を投入し、今度はあらぬ力ですり潰し始めた。心なしか背骨が喜んでいるようにも思ったくまさんは、その態度がまた気に入らず、いっそうの力を込めた。後の記録によると、くまさんにはこの辺りの記憶が無いそうだ。そして、一時間ほども経っただろうか、背骨は跡形もなく玉と共になって粘り気のあるジュース状に姿を変えた。
 「ほえ〜………………………………!?」
 我に返ったくまさんはすり鉢の中をのぞき込み、その姿に驚愕した。
 「これはマジぽん!?これはマジぽんなのでしょうか!!??」
 大変なことをしてしまった。僧から預けられた大切な背骨をジュースにしてしまったのだ。くまさんは愕然として、途方に暮れた。
 (くまさん、ボクを飲んで)
 くまさんには何とも可愛らしい声で、確かにそう聞こえた。
 (さあはやく)
 一瞬躊躇ったくまさんだったが、流石はくまである、すり鉢に顔をつっこみわずか一秒足らずで飲み干した。この時くまさんの中で何もかもが変わった。

 そう、これですべてが背骨の思い通りになったというわけである。


[ペニースミソン島津 / マイポニー竹中]
Community : 小説・文学   連載小説
 
  00:20 | Trackback:0 | Comment:0 | 
 
 
 
 
 

鼻翼のキュビズム (第9話)

 戦争プレイを終えた拓海はスヤスヤと眠っていた。この時ばかりは拓海も15歳らしいあどけなさの残る寝顔をしている。淳子はこの一か月間に受諾したポツダムの数を数えていたが、手足の指を全て使っても足りない。彼女は右翼サディストである。このままではいけないと思っていた。明日もし拓海がポツダムの受諾を強要してきたとして、快楽に負けて受け入れてしまったとしたら、もう私は生きてはいられない。天皇陛下に申し訳がたたない。
 悲しげに君が代を鼻歌で歌いながら坂倉家を後にする淳子。その歌声に目を覚まし耳を澄ませていた拓海は淳子の想いを悟った。そこまでの決意があるならやはり俺が楽にしてやろうか?それこそが俺から淳子への最後の愛の形なんだろうか?
 そこへ久々に父親が帰ってきた。帰って来るなり彼は、全裸の上に着たトレンチコートを路上変質者のそれのようにガバッと両手で開くと言った。
 「息子よ、父を見ろおおおぉぉぉぉぉ―――――――――…………………………!!!!」
 そしてそれがそのまま断末魔の叫びになった。逞しい父の裸体が見る見るうちに膨張し部屋一面を埋め尽くしたかと思うと、そのまんま風船に針を刺す様に破裂した。父らしい最後だと思った。拓海は父の破片がそこら中に散らばっている中に残されたトレンチコートを拾い上げた。いつの間にかコートに包まれていた何かがパサッと落ちた。
 「手紙?」
 男根祭り限定のレア物封筒である。それだけでテンションが上がる拓海。開けて見るとそこにはやはり男根祭り限定の便箋が一枚と、写真が入っていた。便箋にはこう書かれていた。
 「エロ動画うpしる\(^Ο^)/父」
 写真に写っていたのは、幼い拓海、若き父、そして……………亡き母だった。幸せそうな家族。拓海の目から涙が溢れた。
 「父さあああぁぁぁぁぁぁ――――ん!!」
 拓海は泣きに泣いた。父は全て理解してくれていたのだ。然るべき年頃だったといえ、全ての責任を父、そして亡き母に押しつけて来た甘えた自分を嘆いた。そして父の最後の贈り物に深く感謝した。感謝する程に溢れる涙を彼は拭い去る事が出来なかった。しばらくすると拓海はスックと立上がり何処へとも無く、しかし心では父へ向かって、敬礼して言った。
 「プロフォンドで………行きます……!!」
 親への限り無い感謝、そして本当に一人で歩き出す未来形の熱い想い。拓海の思春期は終わった。


[マイポニー竹中 / ペニースミソン島津]
Community : 小説・文学   恋愛小説
 
  12:34 | Trackback:0 | Comment:0 | 
 
 
 
 
 

鼻翼のキュビズム (第8話)

chapter 5

 「下着じゃなくてパンツって言えやクソ右翼の腐れマンコが!!!!」
 拓海は反抗期だった。
 拓海15歳の秋である。泥鰌掬いのそれのようにウニウニと悶える彼の分身は、あの日淳子と組んで右翼プレイに徹していたあのならず者への代償として壮絶な絶頂を与えた時の快感を密かに思い出していた。しかしながら、流石の拓海も淳子に対してそのような仕打ちをするには、まだ若干のためらいがあるのだった。
 「ブリーフのくせに生意気よ!!」
 この女、吐かしやがった。
 ムキーッとなっている淳子を、実は意外にも冷静に罵り続ける拓海は、選べる道は二つしかないと分かっていた。
 一方は淳子と共になって普通の幸せを目指すこと、そしてもう一方は無論淳子を文字通りの骨抜きにする事である。
 あの日、背骨を失い、脱ぎ捨てられた肉襦袢の様に横たわっていたかつての下僕の姿を見た淳子は、奇声を発したりはしなかったものの、静かな狂気に取り付かれ始めた。拓海が13歳になり、精通したのを見抜いた淳子は、拓海を「合衆国」と呼び、毎晩のように「太平洋戦争プレイ」や「世界大戦プレイ」を要求して来た。拓海の中学での英語の成績がトリプルAをマークし、後のプロフォンド海外ロケ時にそのスキルを発揮したのは、この時淳子が拓海に英語での言葉攻めを強要したからだった。とはいえ中学生英語のレベルでは、勃起した陰茎を指差して「This is a pen. This is a pen.」と囁くのが精一杯だったが。
 この日も下着をめぐる口論は「戦争」に発展し、習慣どおり、
 「ポツダム?ポツダーム?」
 という拓海の問いかけに淳子が
 「受諾イエース!!!!!!」
 の絶叫で答える形で終了した。夜が明けた。ベランダから差し込む東京の朝日が淳子の寝顔を照らした。60年分の平和を凝縮したような朝だった。


[ペニースミソン島津 / マイポニー竹中]
Community : 小説・文学   連載小説
 
  23:39 | Trackback:0 | Comment:0 | 
 
 
 
 
 

鼻翼のキュビズム (第7話)

 沈黙を裂いて一人の男が何か囁いた。
 「は………ブ……。」
 「え?」
 この男がリーダー格か。咄嗟にくまさんは悟った。目が違っている。まるで蛇の様な目である。ん?蛇の様な目?マングース?ま、まさか…
 「ハブゥーー!!俺のハブゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーー!!!!!!!」
 化け物だ。彼がではない。彼の股に住まう主が、である。彼の下ろされたファスナーから顔を出したそのバデーは余りにも激しく縦横無尽にうねりながら、狭すぎる谷を抜け出す毒蛇が如く伸びていく。この毒蛇を包み込む鎧の様な幾つもの太い筋が、去勢されいつの間にか小動物に成り下がっていたこの熊の体をより硬直させる。フシュー……フシュー……。頭部から泡を立てて噴き出す涎は白く濁っている。
 やがて動きがおさまり、ゆうに3mは越すであろう浅黒い大蛇がくまさんを見下ろした。そして、男が言った。
 「マングースよ。長年の我が一族の恨み、晴らさでおくべきか。丸腰とはいくまい。お前も武器を出せ。」
 くまさんはためらったが、
 (く、くそー僕だって!僕が、僕がぁぁ〜〜☆)
 と、股間部の毛皮を必死に掻き分けた。
 ……取り出したそれはまるで食べかけのチョリソーだった。
 「いやー情けない!参りましたな!ハッハッハ!」
 くまさんは背に腹をかえ、キャラ調整という防衛策に出たのであった。そのモデルがかの平泉清であったことは史実の通りである。
 「いえいえ、私も出来る事なら是非とも一戦交えたいとこですがね、なにせチョリソーではどうにもね!ハッハッハ!」
 見せ掛けの笑顔の裏でくまさんの心は泣いていた。本棚の影から一部始終を見守っていた巨根のタイガーサイキックことチバ君は、その嗚咽が聞こえてくるような思いがして、不覚にも涙をこぼした。チバ君の心の隙間のcookiesは剥がれ落ち、ペニスはゆっくりと勃起して行った。気づけばチバ君は連中をかきわけ、あらん限りの力でくまさんを抱きしめていた。
 「お前は…お前はまさに、テディベアソウルのダイアモンド・チョリソーや!!」
 「ヒコマロかー!ヒコマロの物真似かぁーっ!!」
 「ええんや!切られててもお前のペニスはお前のペニスや!誰もお前の代わりはおらんのや!それでええんや!くまはん、お前はそれでええんやああー!!」
 二人は泣いた。その声はB棟地下五階に響き渡り、宇宙に届いたっぽい空気になったので、ハブ男達はお家に帰る事にした。


[マイポニー竹中 / ペニースミソン島津]
 
  00:04 | Trackback:0 | Comment:0 | 
 
 
 
 
 

鼻翼のキュビズム (第6話)

chapter 4

 カンボジアの陽が貯水池に反射して揺れている。僧の修行場はサティアンと化し、くまさんの世話役の職は全身タイツをバージョンアップさせたチバ君に奪われていた。くまさんは途方に暮れた。
 ここ最近チバ君のかぶっているピンク色の水泳帽を以前かぶったことがあるだろうかとくまさんはふと思ったが、やはり無いだろうと思い下唇を噛んだ。
 彼の新型の全身タイツは常人にはまるで理解出来ない代物であった。要所要所――つまり体のありとあらゆる穴――にはcookieの欠片が詰め込まれ、その上から小さく切ったタイツをなるべく伸ばしセロハンテープでキツく貼り付けている。
 暇を持て余したくまさんは地下五階にある図書館に初めて行ってみた。僧に憧れを抱く男女の若者達が連なる机に腰掛け、皆一様に中和辞典を開き自慰行為に及んでいるのを後ろから眺める。清潔な文字列の持つ卑猥さに自己を覚醒させ、息を発てぬ様に、唸り声を上げぬ様に……自己洗脳してゆく。そしていつか辞典類等のありとあらゆるオードブルを捨て、自己を捨て、全くの無我無心で絶頂を迎えられるようになれば、それはそれでまぁ凄い感じであるらしい。だが、くまさんには僧を追う若者達の目指すモノと彼の見てきた僧の姿に、大きな違和感を感じていた。
 「彼って見た目ほど、そんなに冷たくないんだからねっ!」
 くまさんは思わず叫んだ。若者達は一斉に振り返り、ハッとする熊を見た。はじめ少し驚いた風だった彼らの表情が徐々に変わっていく事に気がついたくまさんは、これはすこぶるヤバス、と思った。が、時既に遅し。囲まれていた。こいつら熊に欲情してやがる。
 愛玩動物としてかつて去勢手術を受けていたくまさんには、彼らを迎えうつ術は無かった。しかし、
 「おまいら、ボクチンを、あのディズニーの黄色くてハチミツ舐めてる露出クマ野郎と一緒にしてたら痛い目見るのだぁー!」
 と彼らを一喝すると、くまさんは目を瞑り、打開策についてしばしのシミュレーションを行った。強靭かつ出来るだけでかい、ペニスの代用物を持ち合わせていないだろうかと。
 「二、一…先手くまさん、二回目の考慮時間に入ります!」
 アナウンサー志望のロリポップロックンローラー・モン吉がそう云い終わるのとほぼ同時に、くまさんは目を見開いた。くまさんの頭の中には、猛々しく勃起したチバ君のタイガーペニスと、勇ましく屹立する通信棟のパラボラアンテナから着想を得た、ある戦略のイメージが巻き起こっていた。
 「ま…ま…」
 くまさんが微かな声で呟きだす。ジリジリと歩み寄る若者達。最前列では、男子はチャックを下ろし、女子はホックを外し始めていた。押し倒される寸前になってようやく、くまさんは叫んだ。
 「マ、マングゥース!!!!!」
 若者達は静止し、何が起こったのか、という具合に顔を見合わせた。
 「…の、モノマネ!」
 しまった、とくまさんは思った。マングローブをマングースと言い間違えてしまったのだった。致命的なミスだった。


[ペニースミソン島津 / マイポニー竹中]
 
  22:48 | Trackback:0 | Comment:0 | 
 
 
 
 
 

鼻翼のキュビズム (第5話)

 思った以上に時は急速に流れた、と思われる。ごくごく個人的に行われる男女間での社会プレイがアンダーグラウンドで有り触れたモノであり、達人級になるとこの星の核戦争に向かう速度を脅かし、平和主義者達からの喝采を浴びている、と知るまでに、あの淳子事件よりそう時間はかからなかった。五歳になった拓海少年はもう自分がすべき事が何なのか、判っていた。
 「嗚呼俺は奴等を許さない。」
 と、拓海は誓った。あのプレイヤー達は立場を勘違いしている。本物の猥褻を食らわしてやる。思い上がった奴等に必ず懺悔させよう。
 公園のJungleGymの天辺で彼は北朝鮮の方向に会釈した後、
 「先生トイレ!!」
 と叫んだ。彼にとっての最初の標的が淳子だった事は言うまでも無い事であろう。しかし先ず、Gymの下から
 「先生はトイレじゃありません!」
 等と口走った女に、熱い想いをぶちまけてやった。女の頭上から緩く湧き上がる湯気を、春の風が優しく揺らしていた。
 トイレと化した女の頭部に白い一弾を打ち込むには、五歳という年齢は早すぎた。しかし拓海の雄叫びが西向きの風に乗って、北の将軍の耳に届くと、平壌のナンセンス牧場にて同時刻に変態雑技団のマスゲームが開始され、拓海はそれを見て良しとした。
 変態雑技団にはいじめがあった。「北のビヨンセ」の異名を持つエース・ボア蔵がその指揮を取った。被害にあったのは、成績不振のナックルボーラー・イル蔵だった。実際のところ、拓海がそれを知っていたかどうかは定かでない。しかし、イル蔵がボア蔵の手によって文字通りの骨抜き状態にされる手法と、拓海が例の肛門日の丸野郎をそうした時の手法は見事に符合した。これが必然でない、というのはあまりに考え難い。
 拓海は淳子の襲撃にあたり、一抹の後ろめたさを感じていた。実際、彼が淳子を餌食にしたのは、マイク坂倉としてプロフォンドを設立してからの事だった。


[マイポニー竹中 / ペニースミソン島津]
Community : 小説・文学   自作小説
 
  01:37 | Trackback:0 | Comment:0 | 
 
 
 
 
プロフィール
 
 

ブルドーザー

Author:ブルドーザー
ブルドーザー:
マイポニー "ジェットゴリラ" 竹中 / スミソン "ペニーボーイ" 島津
2006年冬より「ペニペニ飲む?」として活動を開始、リレー小説の形をとり、「ドルフィンキックでおとしめて」「鼻翼のキュビズム」などを完成させる。2007年よりモスクワ近郊にて分断服役後、今夏帰国。現在は2名とも変わり果てた姿になっている。

 
 
最近の記事
 
 
 
 
最近のコメント
 
 
 
 
最近のトラックバック
 
 
 
 
月別アーカイブ
 
 
 
 
カテゴリー
 
 
 
 
ブロとも申請フォーム