情婦と常識人が頂上で再会し空には某有限会社の飛空挺が甲高い声で咽び泣いていたある晩、腕時計を見ると8時42分53秒だったが、それによって僕はシマダがひどくしぶとい男だという事を悟り、ガトリング砲を搭載した36式の真空管アンプを黄金のツバメが飛翔する原宿の中空に突き立て、こう叫んだ。
「ライフセイバーをダビングしろ!!!!!!!」
半ば強制的にカフェテラスにはベーグルの雨が降り注ぐ始末となり恋人達は蝶にでもなったかのように歓喜した。直説話法のダブワイスを添削するフリーライター達が全国の公衆便所を席巻し、テロリストの様な象の目をした怪物に追われている社会背景を、僕もシマダもひどく疎んじていた。
新作カセットデッキの実演販売が始まろうとしていて一刻の猶予も無い。各駅切符がゴミ箱に捨てられて窓枠から最終便の雷雨が滴り落ちている。水銀が果てしなく透明な宇宙を力強く上がってプラカードに染み込んだ。人を殴りつけるように素早く、B級映画に出てきた星座のフィギュアがストローでモスコミュールを嗜んでいる。太陽が見えるか。
甘えきった膨張を見せる過去のフォークソングに憤死してブレイカーの切れてしまった高層ビル群がツバを吐く。奴隷の汚名を着せられてプラスチックのミュールで踏んづけられたハウスミュージックの重鎮はとうに灰と化した排水溝の記念碑として崇め奉られていたので、仕方無く400デシベルの騒音公害と共に色彩の暴力を必要としていた。
渇く街 「欲しいのはまとまった知識なんだよ!!!!!」
ある労働者がブタ箱で起こす貧乏ゆすりの波が鉄塔から鉄塔へ渡り歩いた。もう時間が無いし方法も無いと思った。それでもシマダは走った。そこに真空管アンプでサイン波由来のSynthbassで乳酸菌を注入するなど、麦茶に氷と共にレモンの輪切りを浮かべるようなものだった。今靴底によって石畳が接吻されて湧き立ち、千本のカザグルマが奇行を涙目で見守るあのパン屋の曲がり角では原理的なポルノ雑誌が風に巻かれた。肌色商法の花嵐に燻し銀のステッカーを貼って、去勢した一部の昆虫学者たちが女性の権利の拡張について2、3の意見を述べ申したてているのを尻目に歌うバブルガムポップは格別じゃねえ?とシマダに聞くと、そうだ、とだけ答えた。 太陽が見えるか。
その黒点の全てが情熱を相対化する中で地球上に安穏とした廃墟は残すところあと一箇所となった。塩辛い粥とシリアルを同時に頬張って僕らはそれを破壊しに行く。足の踏み場も無いベーグル地獄に横たわるラヴァースロックは鳴り止まない。
秒針は回想される。今日は取り外し可能なアミノ酸でサプリメントを施された九官鳥を粉砕したダイナマイトか、あるいは腸内環境の精鋭部隊が振りかざす星条旗のレプリカのうちに終わって行った。中央広場でとびきりハードコアな仕打ちを受けた青春時代を決して忘れてはいないし、これからも忘れないだろう。蛇口をひねると聖句の嵐が吹きすさび、地下道がバグパイプのように何かを増幅させた。
何も無い、という事だけは判った。それは部屋に入った瞬間にありとあらゆるバビロンとの比較の中で、常軌を逸する情報量が壁紙の凹凸(壁紙に凹凸があるのだ)との間で交わされ、半ば挑戦的な視線で蛍光灯を見上げても、それは蛍光灯ではなく、光源らしきものは原理的な灰色の中にしか存在しなかった。
真鍮のフローズン・ヨーグルト。それが彼女の第一印象だった。くどくどと自分の政治的立場から音楽の趣味までもを絡めた自己紹介を行い、女神と名乗る彼女が舐めた後のアイスクリームは、見事なダビデ像のペニスを模っていた。その技のあまりの滑らかさに舌を巻いた僕は、忽ちのうちに女神を信仰しきってしまった。僕は女神に訪ねる。間説話法で、無くした季節が見つかるルートはあるかと。しかし彼女は直説話法で答えた。
「無理です。このコーンスターチ野郎」
ピックが磨り減っている。毛玉取り機の中に僕はいつくかの肉塊を見つけ、強烈なセックス・アピールの一種としてある鳥類がやるのにも似た無謀な変拍子ステップを踏んでいたそれらを掴み取り、街頭の圧力鍋の中にぶち込んだ。あついよう、あついようとそれらは戦慄いたが知った事ではない。ゴキブリ並みの生命力で女神の卵が熱湯から跳ね出し、襲い掛かるような事は起こらなかった。たちまちそれらはスペアリブの骨から染み出したスープの中でその命を絶った。
世界的にも前例が無かった出来事という訳ではないけれど、無数の選択肢の中でコーンスターチを痔の応急措置に用いたのはこの帝国独自の手法だとしか言い様が無い。GOOD JOB.と、アメリカ人なら言うだろう。きっと。きっとね。
かくして新時代の夜明けは四半世紀先に繰り越され、それは家族で分け合えるオプション付きとなった。